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ハイジーア通信 クリニックハイジーア

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2006年07月03日


間があいてしまいましたが(あきすぎです…)、日産婦シンポジウム「妊娠と栄養―妊娠中の適切な栄養管理をめざして」の続きを書きたいと思います。

 

5月26日のエントリの続編です。



胎児が低栄養下に置かれると、グルコース利用を最小限にするため胎児の筋肉量の減少や、膵臓のβ細胞の減少や腎臓のネフロン数が減少することなどが知られています。

このような子宮内環境の悪化に対する適応反応は、胎児期の生存には有利に働きますが、臓器や組織に起きた変化は永続的に続くため、出生後に高血圧、糖尿病、心疾患の発症リスクの増大などさまざまな影響を及ぼすことが指摘されており、胎児胎内プログラミングと呼ばれています。

つまり、胎児期の環境により、将来の体質や疾患の発症の素因がプログラミングされる、ということです。

こういった考え方は、Barker仮説の出現より発展した分野であり、HOTな研究テーマでありながら、臨床的な意義が深く、とても興味深いです。

これが全てではないにしても、単純な高コレステロール血症だけでは説明がつかなかった病態が解明されつつあるわけで、画期的なことです。

この胎児胎内プログラミングの機序を検討した研究です。

 


 

演題3 妊娠中母体低蛋白栄養が胎児胎内プログラミングに及ぼす影響とその発現メカニズム

順天堂大学産婦人科 伊藤茂先生

 

 

<実験目的>

 

     IUGR(子宮内胎児発育遅延)が将来の児の生活習慣病と関連していることは裏付けられているが、IUGRがなければ問題にならないのか否かを、以下の点で明らかにする


A.妊娠中の母体低蛋白栄養が子宮循環に与える影響

B.妊娠中母体低蛋白栄養がありながらIUGRのない児の、高血圧、冠動脈疾患に対する影響


     胎児起源説成人病の性差と卵巣ホルモンの関係


     次世代への影響―妊娠中母体低蛋白栄養があった児の次の妊娠に対する影響

 

 

<方法>

 

ラットを交配後、妊娠初日より、

食餌中のカゼイン(乳蛋白)18コントロール群(C群)と、

9低蛋白栄養群L:不足カロリーは糖質にて補填)の2群に分け、実験を行った。

 

実験1.


妊娠1819日でラットで安楽死させ、wire myographという方法で子宮動脈の血管内皮細胞機能を評価した。

また胎仔数・体重・胎盤重量も測定した。

 

実験2.


ラットを出産させ、両群の仔ラット(F1ラット)を、各々さらに日齢50卵巣を摘出した群(Oxと、卵巣を摘出しない偽手術を行った群(Oi)2群に分け、各群の血圧・体重を測定した。

日齢175180日で各群のラットの腸間膜動脈をwire myographにて評価した。

また心臓の冠動脈周囲の線維化を評価した。


C-Oi:コントロール群の仔で偽手術群

C-Ox:コントロール群の仔で卵巣摘出群

L-Oi:低蛋白栄養群の仔で偽手術群

L-Ox:低蛋白栄養群の仔で卵巣摘出群

 

実験3.


両群の仔ラット(F1ラット)を日齢70125で交配し妊娠させ、妊娠中の血圧・尿蛋白を測定した。

また妊娠2021日でその仔ラット(CLの孫ラット)の体重・胎盤重量を測定した。

 

 

<結果>

 

実験1


<胎仔数・体重・胎盤重量>両群間で差はなかった。


wire myographCと比較してLでは、VEGFに対する拡張反応の低下を起こし、妊娠中の子宮循環維持機能を低下させていることが示唆された。

 

実験2.


<新生仔数・出生体重>両群間で差はなかった。

 

<発育>生後の発育は50日目までは4群間に差はなかったが、50日以降Oxラットの体重はC群LともにOiラットに比較し有意に増加した(CLの間には差はなかった)。

 

<血圧>50日目までは4群間の収縮期血圧に差はなかったが、Lでは75日目から収縮期血圧が上昇し始め、125日目にはOxラットでCLの間に有意差を認めた。また175日目にはOiラットでもCとの間に有意差を認めた。

 

wire myographCに比較してLbradykinine(BK)に対する有意な拡張反応の鈍化を認めた。この傾向は卵巣摘出されたOxラットでより顕著であった。

 

<冠動脈>Lで冠動脈周囲の線維化は進行する傾向にあり、卵巣摘出により悪化の傾向が見られた。

 

実験3.


Lの仔ラットが妊娠した場合、妊娠中の血圧上昇は認めないものの尿蛋白は増加傾向にあった。

Lの仔ラットが妊娠した場合、有意に母ラットの妊娠中の体重増加が悪く胎盤および胎仔体重は小さい傾向があった。

 

 

<考察>


        生下時IUGRが存在しなくても妊娠中の胎内環境の悪化があれば、胎児胎内プログラミングを誘導する可能性が示唆された。


        卵巣ホルモン(エストロゲン)は胎児胎内プログラミングにより誘導される高血圧に対し抑制的に働くことが示唆された。


        胎児胎内プログラミングにより誘導された高血圧、冠動脈疾患はkinin-kallikrein系が深く関与していることが示唆された。


        妊娠中母体低蛋白栄養はその仔の妊娠にも何らかの影響を与えることが明らかとなり、胎児胎内プログラミングは次世代へ影響を与えることが懸念された。

 

 

 

解説は次回とします。





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