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妊娠を妨げる機能性不妊のさまざまな原因

生物学的には、40代よりも20代のほうが妊娠しやすく卵子の質も良いことは、言うまでもありません。
妊娠を妨げるもっとも大きな機能の問題は、言うまでもなく「加齢(=老化)」による卵子の質の低下です。


卵子が由来する細胞は母親が母体内の胎児のときには既に卵巣内に準備されているため、母親の年齢が40歳なら卵子も40歳と、同じように歳をとり老化していくと考えてください。
卵巣年齢や卵子の年齢は、「実年齢プラス1歳」とも云われます。
つまり妊娠を希望する女性の体全体のアンチエイジング治療が、卵巣機能を上げ、老化卵子の質を改善する治療でもあるのです。
 年齢でことなる不妊治療の出生率
 出典 : アメリカ疾病予防管理センター(CDC) Webサイトより一部改変

では、老化とは具体的には何でしょうか?
老化は、単純に「加齢」だけではありません。
誰もが、同じスピードで老化をする訳ではないのです。
(遺伝的な背景なども関与しますが、)40代前半で閉経を迎える女性もいれば、50代半ばまで月経がある女性もいますから、実際には体内年齢は10歳以上もの開きがあることになります。
老化には非常に個人差が大きいことを知ってください。

その違いは、ミトコンドリアです。
私たちの細胞の60兆個の中には、「ミトコンドリア」と呼ばれるエネルギーを作り出す器官があります。
およそ体重の1割がミトコンドリアですから、大きな臓器?とも云えるかもしれません。
そして生殖細胞である卵子は特殊な細胞で、体細胞と比較して、ミトコンドリアの数(量)が非常に多いことは、皆さんもご存知ですね。
肝臓や心臓などの体細胞内のミトコンドリアの数(量)はおよそ300~500程度ですが、なんと!生殖細胞の卵子は10万個ものミトコンドリアを備えています。
通常、私たちの細胞は毛細血管から常に栄養されていますが、たとえば心筋梗塞や脳梗塞などで血管がつまり血流が途絶えると酸素と栄養の供給が断たれますから、その先の細胞は数分ともたずに死んでしまいます。
しかし卵子は、卵巣から排卵された後、子宮内膜で着床するまでの4~6日間と、受精後4~6日の間、血管から一切栄養を受けることができません。
その上、卵管で精子と受精した後は、分割=細胞分裂を繰り返しながら内膜まで到達しなくてはなりません。
細胞が分裂するためには、大きなエネルギーが必要です。
受精卵は着床まで、いってみれば飲まず食わずで細胞分裂(=分割)を活発に繰り返しながら(いわば)泳ぎ続けなければなりませんから、想像を超える膨大なエネルギーが必要であり、それに見合ったミトコンドリア量が必要であることが分かります。

その大切なミトコンドリアの機能が低下し、そしてミトコンドリアの数が減少するのは、なにが原因でしょうか?

ミトコンドリアの質と数(量)を低下させる原因≒老化させる原因は、複合的です。
1、 現代型栄養失調
2、 有害ミネラルや化学物質の蓄積
3、 体内の炎症
4、 遺伝子の多型やSNIPsの問題
5、 免疫異常
6、 グリケーション(=糖化) など

妊娠・出産は、いかにも自然で何気ないことのようでありながら、実は無数のハードルを乗り越えたアカツキに、奇跡のように起きる出来事の連続です。
上記の複合的な要因が、ハッキリとは目立ちませんがコッソリとそれらのハードルを高くして、妊娠しにくい体内環境の一端を担っています。

まず、一つ目は現代型栄養失調です。
朝は菓子パン、昼はコンビニのサンドイッチ、スナック菓子がお酒のおつまみ・・・というような食生活で体外受精を幾度となく繰り返している方が実際に少なくありませんが、これでは本末転倒です。 卵子は血管から常に栄養されており、その栄養は私たちが口にした食べ物、そのものです。
毎日の間違った食生活で栄養が悪ければ、老化は早まり、卵巣機能を低下させ卵子の質は悪くなります。
実際に、栄養状態が悪いと卵子の減りも早く、閉経が早くなることが知られています。
現代型栄養失調とは、昔のそれとは違い、炭水化物や質の悪い油でカロリーは十分、というよりはむしろ過剰な場合が多いですが、大切なたん白質やビタミン、ミネラルが著しく欠損している状態です。
たとえ「私は、食生活はバランスよく毎日食べてます!」とおっしゃる方でも、例えば下記のように野菜の栄養価は1950年と比較すると5分の1にまで低下しています。



このようにカロリーだけは十分ですが、ビタミンやミネラルの補給は十分とは言えず、現代人の食生活はけっして良いわけではありません。

ミトコンドリアは細胞内に蓄積された糖や脂質、たん白質を分解して、エネルギーを産み出すエネルギー工場です。
下記の図をご覧ください。

 ミトコンドリア内のTCAサイクルと電子伝達系の図

ミトコンドリアが十分に機能しエネルギーを作るには、このように様々なビタミンやミネラルが協調して働いています。
細胞質内からミトコンドリアへのピルビン酸や脂肪酸の進入を助けるα-リポ酸やL‐カルニチン、TCAサイクルを回すにはビタミンB群、鉄、亜鉛、マグネシウムなど、電子伝達系ではコエンザイムQ10などが必要です。
どれか一つが欠けても、エネルギーを作ることができません。
そして十分なたん白質がないと、卵子一つあたり10万もの膨大なミトコンドリア量を維持することはできません。
年齢に関係なく妊娠に至るには、年相応に健康であればよい。という訳にはいきません。
40代よりも30代、30代よりも20代のほうが、より妊娠しやすいわけですから、限りなくミトコンドリアの量を10万に近づけていきたい訳です。
そのためには、卵細胞内のさまざまな栄養素の分子レベルを最大にする必要があります。
また、ミトコンドリアが細胞内の糖質や脂質からエネルギーを作るときには必ず酸素が必要ですから、副産物として活性酸素を産生します。
そのためビタミンCやビタミンE、カロテン類などの抗酸化ビタミンの十分な補給も大切です。
本来、体には活性酸素と闘う抗酸化物質を作る能力が備わっていますが、この機能が加齢とともに衰えてしまいます。
抗酸化力が低下すると活性酸素の除去が不十分になり、その結果ミトコンドリアは十分なエネルギーを作れなくなりますから、卵子の成熟や受精、分割などに悪影響をきたします。
積極的な卵質の改善には、まずは正しい食生活を実践することが基本であり、その上で治療レベルの至適量の栄養素の補給が必要になります。

二つ目の問題は、有害ミネラルや化学物質の蓄積です。
ヒトは、一生でおよそ30~40トンもの食べ物を食べるそうです。
その食べ物と一緒に、水銀や鉛、カドミウムやヒ素などの有害ミネラル、農薬、遺伝子組み換え食品(GMO)、添加物、トランス脂肪酸、薬剤、ダイオキシンなど環境汚染物質など、さまざまな有害な化学物質を知らず知らずのうちに体内に摂り込んでいます。


 ダイオキシンと不妊

これらの有害物質が及ぼす悪影響の共通点が、生殖機能の低下、つまりミトコンドリアの機能を著しく低下させるのみならず、胎児の奇形や知能の発達に悪影響を及ぼすことが知られています。
新生児の臍帯血から200種類以上の化学物質が検出されるようですから、現代人は母親のお腹の中からすでに汚染されているのです。
とくにメチル水銀は脳の発達期にある胎児に感受性が高いことから、胎児への悪影響に関する研究がたくさんおこなわれています。
母体より高い濃度でメチル水銀が胎児に移行し蓄積すると、記憶、注意、言語などの能力が低下してしまいます。

2010年に世界で施行された約117万周期のART治療のうち、およそ20%が日本で行われ、いわば日本は不妊大国とも呼ばれています。


米国では卵子提供が認められているため単純には比較ができませんが、下記の表のように農薬の使用量が先進国中もっとも多く、米国のおよそ10倍も使用されていることが一つの要因であることは十分に想像できます。



水銀や鉛、ヒ素やアルミニウムなどの有害金属がミトコンドリア内でのエネルギー産生をダイレクトに阻害し卵子の質の悪化を招きますから、積極的なデトックス治療が大切です。


 TCAサイクルのエネルギー阻害の図

さまざまな毒物は、おもに肝臓が解毒した後、7割から9割は腸管から捨てられます。
そのため毒物の排泄には、肝機能と腸内環境を整えることが必要です。
善玉菌は、腸内環境が弱酸性でないと生きていくことができません。
便秘(=アルカリ性)や下痢(=強酸性)の状態では悪玉菌が増殖していますから、腸管に捨てられた毒性物質の脱抱合→腸管から毒物の再吸収となり、体外に毒物が排泄できません。
そのうえ肝臓が有害物質を解毒するには補酵素としてビタミンやミネラルをたくさん必要としますから、食事から摂取する栄養素だけでは十分とはいえないのです。
今からでも遅くはありません。
妊娠を希望されるならば、添加物やトランス脂肪酸が含まれる加工食品やファーストフードを食べるのを止める、遺伝子組み換え食品は買わない、野菜は無農薬を選ぶ、水銀の含有量が多いマグロなどの大型の魚は食べないなど、自分でできることは実行してください。
米国女性と比較して水銀蓄積量が3倍の日本女性では、妊娠前のアマルガム(歯科治療で使われる水銀が含まれる詰め物)の除去もお勧めします。
そして有機溶剤とヒ素は汗から排出できますから、毎日お風呂に入って汗をかいたり、定期的にサウナに行くのもよいでしょう。

またMTHFR遺伝子の変異やSNIPsで体内でのメチレーションが十分でないと、不育症、二分脊髄症、無脳症などの原因となる可能性が指摘されています。
メチレーションが十分でないと、ミトコンドリア内でのATP産生も低下し、ミトコンドリアの数(量)は年齢とともに加速度的に減少することが考えられ、卵子の老化が顕著になります。
また遺伝的にミトコンドリアでの電子伝達系のユニット1が欠損している方が非常に多いとされ、水素の受け渡しができませんからエネルギー産生は大きく低下してしまいます。
採卵しても卵子の質が悪かったり、採卵できても胚盤胞までいかない、流産を何度も繰り返す場合では、遺伝子検査を受けてみることもお勧めします。
このような遺伝子のSNIPsは、栄養欠損や有害物質の蓄積が大きく原因しますから、栄養療法とともに解毒治療も非常に大切です。

その他では、免疫異常、体内の炎症、グリケーション(=糖化)なども卵質に複合的に関与します。
どれも、共通して老化を大きく促進する原因でもあります。
胎児のもつ遺伝子の半分は父親由来ですから、母体にとって胎児は云わば「異物」であり、妊娠や妊娠の維持には正常な免疫バランスがあって成立します。
例えばTNFα↑・インターロイキン10↓のサイトカインの不均衡は、子宮内膜の疲弊化を招き着床の妨げとなったり流産を繰り返す原因となります。
その細胞障害性免疫の過剰は、体内の何らかの炎症で起こります。

そして体内のどこかに炎症があると、老化が加速度的に進みますから、卵子の質の低下も年齢以上に早まります。
「炎症」とは体内のあちこちで山火事が起こっているようなもので、常に活性酸素ダメージに曝されていますから、大切なビタミンやミネラルが火消し(=抗炎症)に使われてしまう上、pHは酸性に傾き、たん白合成にも悪影響をきたし、栄養が卵質の向上にまで回らないのです。
栄養はまず母体の生死に関わる臓器の修復から、優先的に消費されます。
卵巣が無くても個体は生きていけますから、卵巣への栄養補給は後回しなのです。
たとえば拒食症や無理なダイエットなどで低体重になり、月経不順どころか数年間も無月経の女性が多いですが、月経が止まっても脳や心臓、腎臓、肝臓の働きは止まることはありません。

また糖尿病に罹患している女性の妊娠率が低いのは知られていますが、グリケーションは年齢以上に卵子の質を大きく悪化させるためです。
糖化亢進による「太り過ぎ」は妊娠の妨げになりますから、適切なダイエットも大切です。
妊娠に至るには、太り過ぎていても痩せ過ぎていても、いけません。
統計では、BMI22.0前後がもっとも妊娠しやすい範囲です。

 

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