SiCKO
ちょっと前になりますが、マイケル・ムーア監督の新作映画「SiCKO(シッコ)」を観て来ました。
アメリカの医療の現状を描いたドキュメンタリー映画です。
ある程度内容を知ってはいましたが、見た後に、軽くブルーになってしまいました。
ご存知のように、アメリカには国民皆保険制度がありません。
入れる人は私的な保険に入るわけですが(入れない人も多い)、入って保険料を払っていても、いざ治療を受ける段階になると、保険会社から支払いを受けられない人がとても多いそうです。
保険料を支払わなければいけない、という時に、保険会社は渋ります。
保険会社の申請がおりないと、医療が受けられないのです。
この映画によると、その渋り方(!?)が半端じゃない。
そのために働く人を専門に雇って、その患者さんの既往歴をこと細かに掘り返します。
例えば、ある女性患者さんが心臓手術を受けるために保険会社に治療が必要な旨を申請すると、むか~~しむかしにその患者さんがカンジダ膣炎にかかっていたことを掘り返し、
「病歴をすべて報告する義務に反している」(すみません細かい言い回しは忘れました)
として、保険を解約してしまう。
いったい、なんのための保険なの…?
という話です。
カンジダ膣炎って、風邪と同じくらいありふれた病気なんですけど…。
それと、医療費があまりにも高い。
いったん病気にかかったり、怪我などをすると、それだけで破産してしまう人がざらにいるそうです。
これは一体何故なんでしょう?
(日本の医療費が安すぎるような気がしますが、それにしても…。)
このあたりの仕組みは良くわからないのでなんとも言えませんが、ごく一部の人だけが潤って、一般市民は搾取されるだけ…、という非常によろしくない構図になってしまっているようです。
日本もこの後追いをしているように見えますが、年金も当てにならないし、自分の身は自分で守るしかない、という世の中になりつつあるのでしょうか?
また、興味深かったのは、アメリカでは高い医療費の多くを患者自身が支払わなければならないのに、カナダやイギリスでは一切お金を払わなくて良いという事実が信じられなくて、ムーア監督が
「こんなはずはない!!」
と言って病院中を訪ね歩き、casherを探し当てるシーン。
(実はこのcasherは違う目的のためにあるのですが…)
アメリカの方って、アメリカがすべてというか、アメリカと違う国があって、アメリカと異なる社会や文化や風習や制度がある、ということをなかなか想像しにくい社会に生きているのではないかと思いました。
多分、ムーア監督がこのようなことを声を大にして言わないと、知らないままでいる人が多いのではないか、と思いました。
(違っていたらごめんなさい)
そのことのほうが怖い、と思わされた映画でした。